ギニアワーム感染者数を激減させた方法
撲滅に成功したのは天然痘だけ
人の感染症は、サルモネラ症・仮性結核・狂犬病・オウム病など様々なモノがあります。それらを撲滅させるために、様々な対策が講じられてきましたが、人の感染症で撲滅に成功したのは「天然痘」だけとされています。天然痘は自然界からウイルスが絶滅したとして、1980年に撲滅宣言が出されたのですが、撲滅に成功した要因は「ウイルスが人間以外に感染しない」「有効な予防ワクチンが作られた」ことなどが挙げられます。しかし、様々な感染症を撲滅させるのは簡単なことではなく、1950年代にWHO(世界保健機関)はマラリアを撲滅させるための計画を推進させましたが、薬が効かない耐性虫の存在などによって撲滅させることは出来ませんでした。
ギニアワームとは
ギニアワームは、日本ではメジナ虫と呼ばれており、人間の体内に宿る寄生虫のことです。ギニアワームのオスは3〜4センチほどですが、メスは70〜120センチほどにまで成長します。ギニアワームが人間に寄生すると、寄生部位に強い掻痒感が生じたり、頭痛・骨膜炎・蕁麻疹(じんましん)などが発症します。なお、ギニアワームが皮膚を突き破り完全に体外へ出るまでは激しい激痛を伴うのですが、古くから行われている方法では、体内から現れたギニアワームを少しずつ小さな棒に巻き上げて体外に出すため、約1メートルほどのメスを体外へ完全に排出するには2〜3週間かかっていたと言われています。
ギニアワームの感染経路
@池の中で、ギニアワームの幼虫がミジンコに摂取される。
Aミジンコに寄生したギニアワームの幼虫は、ミジンコが死なない程度に栄養を摂り成長する。
Bその池のミジンコを含んだ水を人間が飲む。
C人間の体内でミジンコは消化され、ギニアワームの幼虫が腸から体内に浸入する。
D人間の腹部で幼虫が成長する。
Eオスと後尾したメスの1mほどに成長し足の先の方へ移動する。
F人間が水を飲んでから1年ほどで、ギニアワームは足の先から皮膚を食い破り体外へ出てくる。
Gギニアワームの感染者は、激しい痛みを和らげるため池の水に足を浸す。
H体外から出てきたギニアワームは池に入る。
I池の中でギニアワームの雌の子宮が破れ、幼虫が一斉に水の中に放出される。
J種を絶やさないために@〜Iを繰り返す。
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ギニアワームは人を操るというのは都市伝説?
ギニアワームが足の皮膚を破り出てくる際、かなりの激痛を伴うため、多くの人は池などへ行き、足を水に浸けて痛みを和らげようとします。ギニアワームは水の中で幼虫を放出して子孫を繁栄させる必要があるため、ギニアワームが人を操っている(乗っ取る)と言われることがあります。
ギニアワーム撲滅は可能か?
1986年、WHO(世界保健機関)はギニアワーム撲滅に向けた宣言を発表しました。そのとき、世界20ヵ国に350万人もの患者がいました。ギニアワームに関しては、予防ワクチンや治療薬はありません。しかし、汚染された池の水を直接飲まないだけで感染を防ぐことが出来るため、徹底した指導によって年々感染者数は減り、1989年には90万人弱となり、1997年には10万人を切りました。
ギニアワーム撲滅に向けた対策
@感染した患者の追跡調査。
A感染した池などに近づかせない指導。
B汚染した水を飲ませないための教育活動。
C汚染した水を直接飲ませないためにフィルター付きストローの配布。
D子供たちには、絵本・紙芝居・人形劇・劇などによる教育活動。
E給水施設・井戸の建設。
F専門家や海外協力隊員の派遣。
ギニアワーム撲滅に向けて様々な取り組みが行われた結果、ガーナでは2011年に患者数がゼロになりました。そして、2013年は世界の感染者数は148人となりました。
ギニアワーム患者数(2013年)
@南スーダン:113人
Aチャド:14人
Bマリ:11人
Cエチオピア:7人
Dスーダン:3人
※合計148人
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